彼女と付き合い始めて約2年半、自分の年齢も30に差し迫ろうとしており、そろそろ結婚のことも考えなければと思っていました。今の会社に転職して3年が経ち、収入も安定してきたので、その踏ん切りもつき、彼女へその旨を伝えると、彼女の方も気になっていたらしく、お互いの気持ちは結婚というゴールへ向かうことになりました。
まずはお互いの両親への挨拶が大切なので、先に自分の両親へ彼女を紹介しました。一般のサラリーマン家庭で育った自分は妹との2人兄妹。両親の他、妹も同席し、和気あいあいとした雰囲気で両親も気に入ってくれました。
次に彼女の両親への挨拶です。事前に彼女から両親のことを聞いていましたが、ちょっと難しい人物のようです。父親は建設土木関係の会社へ務めているそうで、ダム建設などで全国への長期出張が多く、ほとんど家に居ないとのこと。家に帰ってもほとんど会話がなく、また夫婦間も冷め切った間があるとのこと。さらに兄が1人おり、30を過ぎて独身、3年前から職を失い、今では職にも就かず、たまに臨時のバイトをしているだけとのことでした。その事でほとんど収入がなく、お金の無心を彼女にもしてくるようになり、つい断り切れず、何度か戻っても来ないお金を貸すようになったとのこと。
さらに母親は父が長期出張なことを幸いに、夜は近所のスナックへ出かけカラオケ三昧。半分はそのスナックの従業員として客との接客もしているようです。彼女の家庭環境を聞いただけで、挨拶前は悲壮感とともにブルーな気持ちになりました。
挨拶に行くと彼女の父親はほとんど会話をせず、母親の方も喜びを表してくれず、無関心を装う感じでした。そして母親が切り出したのが自分たちの息子のことです。「これからも息子のことをよろしくね」と言ってきたのです。その時はどういう意味かピンと来ず、彼女の家を後にしましたが、援助をしてくれといった意味合いのものだと分かったのです。
そしてその後判明したことが彼女の父親はほとんどお金を家に入れておらず、向こうでどのような生活をしているのかも分からないとのことでした。そのため、母親もスナックでバイトをして収入を得ているような状況だったのです。したがって彼女の収入もあてにしていたようで、彼女との結婚後も兄の面倒を見て欲しい旨のことを言ってきた理由が理解できました。
このことを自分の両親に相談すると、全ての面において問題があるということで猛反対されました。夫婦間の仲が冷え切っており、金銭的な生活の面において彼女にまで負担があるということ。さらにその兄も自立していないこと。このままでは結婚後も金の無心をしてくる可能性があるということです。
自分としてはその優しい性格や自分に対して気遣いを見せてくれる彼女は申し分なく、愛している気持ちは今でも変わりません。しかし結婚後も彼女の両親たちと付き合いを続けていくことは大きな不安とリスクが予想されました。自分の両親の反対もあり、結婚後の不安がどうしても頭から消し去ることができず、彼女との結婚を諦めざるを得ない結果となりました。
彼女への思いは絶ちがたく、とても辛いものがありますが、自分の生まれてくる子供のことも思うとその決断に踏み切ることが賢明と判断したのです。彼女も自分に対する気持ちは揺るぎなく、一緒になるという意志はありましたが、自分の両親などの負い目もあり、涙を流しながら、自分の気持ちを受け入れてくれました。
一旦彼女との結婚を諦めましたが、暫く時間が経つにつれ、やはり彼女のことを愛している自分が居ることに気付きました。今回彼女が辛い決断をしてくれたのは、自分に対する思いやりの気持ちを配慮してのことだったと分かったのです。
そして彼女の気持ちを確かめるため、再び合うことを決め、3ヶ月後に再会を果たしました。確認すると今でも自分に対する気持ちは揺るぎないものがあるということが分かり、お互いの気持ちは再び一つになりました。
そしてもう一度結婚後の問題をどう対処していくか話し合い、彼女の家とは暫く距離を置いて暮らしていくことを決めました。そのため、彼女には当分辛い思いをさせることになるかもしれませんが、二人が幸せな道を歩むことが大切なので、彼女を支えながら、しっかりと二人で生きていく道を選びました。